物に働く力をイメージできるようになろう! 〜摩擦力〜

要約

摩擦力についてやるよ!

目次

1 摩擦力の発見!

1.1 摩擦力はある!

ここでは摩擦力について観察していきます。 摩擦という言葉は日常でもよく使う言葉だと思います。 普段何気なく使っている言葉ですが、その物理的な性質をしっかりと観察して、新しい知識を発見していきましょう。

摩擦力について観察するのに、毎度おなじみの机の上に置かれた本を使います。 机の上の本には重力と、それを打ち消す抗力が働いているのでした。

本の図

この本を横から押すと、押した方向に動き出すのでしたね。 横には何も力が働いていないので、力をかければ本は動くはずです。

本を横から押す図

いつも通りの力をかければ、本は動きます。 だけど、ちょっと待ってください。 本当に、ちょっとだけの力で横から押してみてください。 そしたら、本当にちょーっとだけ押しただけじゃ、本は動かないことが分かると思います。 どんなにちょっとだったとしても、力は力です。 横から押したら、押されて本は横に動き出すはずなのです。 なのに、なぜか本は止まったままです。 不思議です。

なんて、とぼけてみましたが、もうおなじみですね。 そう、力をかけても物が動かないのだから、それを打ち消すような力が働いているはずなのです! 今度は、横から押そうという力を打ち消す、なんらかの力が働いているはずですね。 それを図に書き入れると、こうなります。

本に手から、机から力が働いてる図

じゃあ、この、正体不明の力って、一体なんなんでしょう? ちょっと本をどけて、手で机の表面を触ってみましょう。 そして、手を机の表面に押し付けて、さらに机の表面をなでるように横に動かしてみてください。

手で机を押してる図

そしたら、なんだか、指の皮が後ろに引っ張られるような力を感じませんか? 感じると思います。 これが摩擦力です。 横からちょっと押しただけじゃ本が動かなかったのは、この力と釣り合っていたためだと考えれば、つじつまが合います。 実によくできた理屈ですね!

1.2 摩擦力はどう働くか?

摩擦力の存在を発見したところで、じゃあ摩擦力はどのように物に働くのかを詳しく観察していきましょう。 まずは、普通に机の上に本を置いて、そこに横から力をかけてみてください。

いつも通り本を動かせますね? じゃあ、今度は、その本の上に他の本をたくさん乗せてみてください。

本の上に本がたくさん乗った図

それで、また同じように横から力をかけて動かしてみてください。 そしたら、今度は同じ力じゃ同じように動かせなくなっていませんか? 本に上から余計に重しが乗っているのだから、普段の経験から言っても、本を動かしづらくなるのは、納得のいく結果だと思います。 だけど、ここで起こっている現象は、実はすごく複雑な事なんですよ? 今起きたのは、本の上に重しを乗せたら、実は本に働く摩擦力が強くなったという現象なのです! 重いから動かしづらいんじゃないんです! 摩擦力のせいなんです!

よーく考えてみてください。 重いというのは、要は重力がたくさん働いているということです。 本の上に本を置いたら、その分支えないといけない重力は大きくなります。 これは、試しに手に持ってみれば分かります。 だけど今は本は机の上です。 机が本を支えるために抗力を生み出すので、本に働いてる重力はきれいに打ち消されているはずですね。

どんなに大きな重力が働いていようと、それは机が抗力で打ち消してくれるのだから、自分の手で本にかける横から押す力を打ち消すのは、やっぱり摩擦力だということになります。 重さじゃなくて摩擦力なんだったら、軽くても重くても、同じように押せそうな気がします。

だけど、実際にやってみると、そうじゃないわけです。 何度も試して納得してください。 重しを取って、軽くした本は簡単に押せます。 重しを乗せたら、ちょっと強い力をかけないと動かせません。 不思議です!

不思議だけど、現実にそうなのだから、そうなのです! つまり、物を動かすのに必要な力は、その物が重くなるほど大きくなるのです! 物に働く摩擦力は、重さが重くなるほど大きくなるということです!

これだけでもすごい発見ですが、もっと深く観察しましょう! 日常的に、物を動かしたくない時に、どうしますか? 例えば、机の上のカードを取られたくないような時です。 上からぺたんと押さえて、動かせないようにしたり、しませんか? これって、どいういう現象なんでしょう?

じゃあ、早速やってみます。 机の上の本に、自分の手で上から押さえつけてみてください。 そして、横から別の手で動かそうとしてみます。

両手で本を押したりおさえたり

そしたら、動かすために普段より余計な力をかけないといけないのが分かると思います。 自分で本を上から押さえつけているのだから、そりゃあ、動かしにくくなるのは当然です。

だけど、ちょっと待ってください。 上から押さえる力は、上から下に働く力です。 横から押そうが押すまいが、働く力です。 本の上に重しを乗せた場合と一緒です。 上から押さえる力は、机が本を支える抗力に打ち消されているはずです。 でなければ、本は机の上に止まっていられません。

本を上から押さえている力の図

この力が本を動かしにくくしているのです。 本に重しを乗せても、手で力をかけても、同じように動かしにくくなりました。 つまり、どちらも本に働く摩擦力を大きくするわけです。

手の力と重しじゃ、ぜんぜん違います。 だけど、どっちも同じように物を動かしにくくします。 ということは、重しが本を動かしにくくしたのは、重いからではなく本に重力をかけたから、だということになります。 上から力がかかっていれば、手の力でも、重力でも、なんでもいいということですね。 なるほど、説明になっています。

だけど、なんか綺麗じゃないわけです。 もっとこう、一つの説明で、現象を説明できないものでしょうか。 何か、共通点はないでしょうか? 上から力をかけた時に、共通して起きる何か……

そう、抗力です! 上から手で押さえつけた時も、重しを乗せた時も、本は机により強く押し付けられて、机は本を支えるためにより大きな抗力を生み出さないといけなくなります。 そして、抗力が強ければ強いほど、摩擦力も強くなるというわけです!

物に働く摩擦力は、その物に働く抗力に関係があるということです! 強い抗力が働いていれば働いているほど、摩擦力も強くなるのです! 2つの力は関係があるのですね! すごい発見です!

1.3 斜面に置かれた物に働く力

斜面に置かれた物には抗力と摩擦力の両方が働いてるよ。

2 もっと詳しく

前回は抗力について勉強しました。 抗力は物の歪みが元で発生する力でしたね。 今回勉強するのは摩擦力です。 摩擦力は物の表面の凸凹が元で発生する力です。 それでは勉強を始めましょう。

どんなに滑らかに磨かれた物の表面も、原子レベルで見れば凸凹しています。 その凸凹同士がぶつかったり、引っかかったりして摩擦力は生まれます。 それをまず説明しようと思います。 それでは、下の図を見てください。

でっぱりのある板が穴にはまっている

でっぱりのある板が穴の開いた板にはまっています。 今、上の板に横向きの力をかけたらどうなるでしょうか? 上の板のでっぱりが、下の板の穴の側面を押して歪みを作り、抗力のときと同じような理由で横向きに支える力が生まれます。 横向きに押す力に対して、それを打ち消す力です。

さて、物の表面は少しではありますが、凸凹しているのでした。 そしてそれが摩擦力の元になるのでした。 では、それを実際に、分かりやすく描いてみましょう。

小さなでっぱりが噛み合っている

床の上に板が置いてあります。 箱の下の面と床は、滑らかですが原子レベルの凸凹があり、それが噛み合っています。 実際には、こんなに整然と凹凸が並んでいるわけはないですし、ぴったりと噛み合っているわけがないですが、ここでは分かりやすくするために少し大げさに描いています。

さて、この小さなでっぱりと小さな穴一つ一つの噛み合い方が、上でやったでっぱりのある板と穴の開いた板の噛み合い方と同じだということに注目してください。 上の板の例と同じ様に、この板に横から力をかけたら、小さなでっぱりが小さな穴の側面を歪ませて、抗力と同じように支える力が生まれますね。 これが摩擦力です。 この力を、摩擦力の中でも、動いている時ではなく止まっている時に働く力なので、静止摩擦力と呼びます。

それに対して、動いている時に働く摩擦力のことを、動摩擦力と呼びます。 動摩擦力は、面の凸凹同士がぶつかることで、動いている物の勢いが無くなることによって働きます。

見た目に分かるほど凸凹した床の上を、凸凹した面を持つ箱が滑ったらどうなるでしょうか? 凸凹同士がぶつかって、箱は少し飛び上がったり、引っかかったりしながら、ガタガタと進んで、すぐに止まるでしょう。 原子レベルの凸凹でも、同じことが起こります。 これが動摩擦力の元です。 本当は、エネルギーの散逸とか、話は複雑なのですが、ここでは、凸凹した面同士がぶつかれば、当然後ろに引っ張られるような力が働くだろうとなんとなく思ってもらえれば十分です。

このように、摩擦力は面にある原子レベルの凸凹が元になって生まれます。 問題を解いていて、よく分からなくなった時は、ここに戻って考えれば必ず摩擦力がどう働くか分かるはずです。

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