物に働く力をイメージできるようになろう! 〜張力 〜

要約

張力についてやるよ!

目次

1 張力の発見!

1.1 張力はある!

抗力の変化バージョンとしての張力。 ひもを引っ張ると、引張返す力を生み出す。 セロテープで糸を硬貨にはっつけて実験。

1.2 張力の性質

ピンと貼ってる時だけ力が出る。たるむと力は出ない。 セロテープで糸を硬貨にはっつけて実験。

2 もっと詳しく

前回までで力に対するイメージもだいぶしっかりした者に なってきたと思います。 今回勉強するのは張力です。 張力は、糸が引っ張る力で、抗力とほとんど同じよう にして生み出される力です。 それでは勉強を始めましょう。


張力は糸やヒモや針金などの細長い物が物を引 っ張る力です。 一番分かりやすいのが、物を天井から吊るす場合です。

天井から本が吊る

されている

本が糸で吊るされています。 本には重力が働いているので、それを支えるために糸が箱 を上に引っ張らないといけません。 この、引っ張る力を張力と呼びます。 糸やヒモの特徴は、全体的に細長くてしなやかに曲がると いう点です。 細くても竹串のように硬くて曲がらない物は糸やヒモとは 呼ばないですが、竹を削って細い繊維状にした物は糸と呼 んでも構わないような気がします。 その境目は曖昧で、学問的には意味の無いもののような気 がしますが、なんとなくヒモで引っ張っているという雰囲 気を出すために張力という呼び方をします。

さて、張力の元はいったい何でしょうか? それは、抗力の時とほとんど同じで、糸やヒモを作ってい る原子や分子の引き合いの力です。 物を吊るすとき、糸やヒモはピンと張ります。 張る、ということは、ごくわずかに糸やヒモが重さで 伸ばされるということです。 糸やヒモ全体が伸ばされれば、もちろん糸やヒモを作 っている原子や分子の間の距離も伸びます。 原子や分子の距離が伸びれば、原子や分子は引き合うので したね。 抗力の回にやりました。 その、原子や分子が引き合う力が集まって、物を吊るす力 、張力になるのです。

抗力と違うのは、張力には引っ張る力しかないということ です。 なぜなら、押し返す力は、原子や分子の距離が押し縮めら れた時に生み出されますが、糸やヒモを押し縮めると たるんでしまい、歪みが生まれず、よって原子の間 の距離も縮まないからです。


ではもっと詳しく張力の発生する様子を見てみましょう。 分かりやすくする為に糸は原子一個一個がまっすぐつなが ったものだとします。 これだと物すごく細くてすぐに切れそうですが、分かりや すくするためなのでそういうところには目をつむってくだ さい。 それでも気になる人は、本物の糸は、こういう細い糸が数 千数万と集まってできていて、今はそのうちの一本だけを 特別に注目していると考えれば、気にならなくなると思い ます。 実際の糸は1個1個の原子がきれいに並んでいるのではな く、細長い分子が絡み合って作っているに決ま っているので、そんなに簡単な話にはならないはずですが 、まあ、結果は変わらないのであんまり気にしないでくだ さい。

糸が天井から垂れ

ている

この糸で何かを吊るします。 今は本を吊っています。 物を吊るとその重さで糸を作っている原子と原子の間の距 離が開きます。 原子と原子の間の距離が開いたのですからそこには引き合 う力が生まれます。

糸が本を吊るして

いる

この引き合う力が張力の元です。 箱などの普通の物を両脇から引っ張った時とまったく同じ です。 糸がそれらの物と違うのは、糸は細いので押し縮めようと してもたるむだけでほとんど反発する力を生まないという ところです。

糸は押し縮められ

るとたるむ

糸がたるんだだけでは、原子の間の距離が縮まないので反 発する力は生まれませんね。 ここが抗力と張力の違いです。


張力の元が分かったところで、張力の働いている様々な例 を見て行きたいと思います。 張力の元は抗力と同じように原子や分子の引き合いの力な ので、抗力と似た性質があります。 糸は切れない限り強く引けば引っ張ったのと同じ強さの力 を生みます。 原子の間に働く力の項目で、箱を左右に引っ張った場合に 働く力について説明しました。 あの時と今の場合で違うのは、糸は自由に曲げられるので 一直線上にない物同士にも同じ張力をかけられる という事です。

2つの箱が糸でつ

ながっている

2つの同じ箱が糸でつなげられて吊るされています。 箱は2つとも同じ重さなので、日常目にする感覚だと箱に 働いている力はつり合って止まっていられます。 箱には重力が働いているので、それを打ち消す張力が働か ないといけません。 それらの力も描き入れると下図のようになります。

2つの箱が張力で

吊るされている

さて、箱にかかる重力は1本の同じ糸から働く張力によっ て打ち消されています。 ここで面白いのは、糸の端と端から箱に向かって働いてい る張力がお互いに反対向きではなく、同じ向きに向いてい るということです。 どちらの端から働く張力も上向きです。

この様子がなんだか変な気がするかもしれません。 しかし、張力の元は原子と原子の間に働く引き合う力です 。 どんな張力が働くかは、糸を作っている原子と原子の間の 距離をよく見れば分かります。 今の場合、上の方で糸を支えている支えの辺りの様子は後 で考えるとして、箱と糸のつなぎ目周辺に集中して考える と、箱にどんな力が働くかが分かります。

今、糸や箱を作っている原子はこのような位置にあります 。 重要なのは糸と箱の境目の辺りなので、図の中では箱の間 の空間は省略してあります。 糸の伸びが左右で同じなら、当然糸を作っている原子の間 の距離の伸びも左右で同じです。 なら、もちろん糸から箱の原子に働く引き合う力も左右で 同じです。 方向は重力と逆向きで上向きとなります。 図からそれは明らかですね。

今は左右で同じ箱に働く同じ大きさの重力が糸を引っ張っ ているので、左右で糸の伸びは同じになって張力も同じに なります。 だから糸は箱を吊っていられるのですね。


本当は糸にも重力が働いているので、糸を作っている原子 に働く力をつり合わせるのに必要な力と、箱に働いている 張力とには少し違いがあります。 原子の間の引き合う力の方が自分に働く重力を打ち消さな いといけないので大きくなるからです。 これ以上の力が働いたら糸が切れるという最大限の力は決 まっているので、糸は自分の重さを支えないといけないと なると、吊っておける最大限の重さが少し減ります。 それは短い糸の場合はほとんど無視できるぐらいの力なの で気にしなくてもいいのですが、例えばつり橋などの非常 に長くて重い糸というか綱を使う場合は重要になってきま す。


もし糸がどこでも同じだけの伸びていたら、当 然張力は左右で同じになります。 では、いつでも糸はどこでも同じように伸びるかと言った ら、そんなことはありません。 例えば支えの上で糸が棒に縛り付けてあったとします。 そういう場合は、糸の左右で伸びが違っていても、棒の歪 みが抗力を生み出して張力を打ち消してくれるので、問題 なく物を吊っておくことができます。

糸が棒に縛り付け

られている

一方、支えの上で糸が特に支えや引っ掛かりになる部分も 無いように、普通につながっていたら、糸は自由に動ける ので、糸を作っている原子に働いている力が打ち消されて つり合っていないと、止まっていられません。 なのでもし、左右で吊っている物の重さが違うと重い物を 吊っている方が下に落ち始めて、逆側が上に上がります。 当然と言えば当然です。

ここでは糸を使って一直線上にない物に力を掛ける場合に ついて説明しました。

最後にこの項目で勉強したことを復習したいと思います。 張力は糸などの細長いものが引き伸ばされた時に生み出す 力である。 糸は引き伸ばされたら伸びるが、押し縮められたらたるむ ので反発する力は生まれない。 糸は曲げることができるので、一直線上にない物のをつな いでおくことができる。

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