物の動きのイメージ 〜加速運動〜

ここでは速度が速くなる場合の運動を詳しく勉強します。
速くなるというのを、加速する、と言います。
物理では遅くなる時も負の加速をすると言うのですが、それは単なる言い方の問題なのでここでは置いておきます。
物が動き出す時は必ず加速しています。
とても身近な現象ですね。


さて、箱が空中に浮いています。

空中に箱が浮いている

箱には重力が働いているのにそれを打ち消して支えてくれる力が無いので、次の瞬間、この箱は下に落ち始めます。
前章でさんざんやりました。
それは当たり前だと思いますが、その様子をもっと詳しく観察していこうと思います。

物は力の働いている方向に動きだします。
今、箱には重力が下向きに働いているので、下向きに動きだします。
つまり下向きに加速します。

この様子を実際に実験して見てみましょう。
何か落としても壊れないような物を目の高さまで手で持ち上げてみてください。
今、その物には重力と手からその重力を打ち消すような力が働いているので空中に止まっています。
その手を離したら、その物には重力しか働かなくなるので、下向きに動き出します。
それは重力の働きです。

ここまでは前章まででやりました。
これからは、動き出した後の運動の様子を詳しく調べていきます。
物に力が働くと速度が変わるのでした。
今は重力しか働いていないので、重力の速度は重力の方向に速くなっていきます。
つまり下向きに加速します。
重力は地上にあるうちは常に働いているのですから、そのままどんどん加速し続けます。

この様子を実際に実験して見てみましょう。
立って何か落としても壊れない物を目の高さに支えます。
そこでその物を支えている手を離したらその物は落ちます。
その時に、自分もすばやくしゃがんで、その物と同じ速さで下向きに動こうとしてみてください。
そうすると、落ち始めてすぐなら追いつけるのに、だんだんと落ちる速さが速くなって追いつけなくなるのが分かると思います。
その物は落ちている間も重力によって、加速され続けているのです。


ではその様子をコンピュータシミュレーションを使ってより正確に見てみましょう。
コンピュータシミュレーションというのは、運動の法則が数式で得られた後に、それを実際に使って数字を計算してみることです。
それが実際に現実に起こる運動と同じかどうかは、実験してみないと分からないのですが、普通の運動に関して言えば正しいことが分かっているので、ここではその辺の議論は飛ばしておきます。

コンピュータシミュレーションによって、箱の落下運動をシミュレートしています。
空中に支えておいた箱を一瞬のうちに支えを取って落下させると、こんな風な運動をする、という事です。
自分で実際に箱を何度も床に落として、その運動を観察するのは大変なので、シミュレーションを変わりに使います。
シミュレーションなら、何百回と同じ運動を再現できるので、勉強するのに都合がいいのです。

さて、では、上の落下運動をよく見てください。
この様子をよく見ると、始め箱は止まっています。
その状態から動き始めるわけですから、箱の落ちる速さは力かかっている方向に少しずつ速くなっているのが分かると思います。

その様子をもっと分かりやすくしたのがこのアプレットです。
0.5秒おきに、その箱がどこにあったかを書き入れてあります。
落ち始めてから0.5秒、1.0秒、1.5秒といった時間に、箱がどこにあったのかが分かると思います。
だんだん箱と箱の間の距離が長くなっていますね。
これは箱が一定の時間内に進む距離が長くなっているからです。
つまり、箱は力のかかっている方向に加速し、落ちる速さがどんどん速くなった、ということになりますね。


今度は斜面を転がる10円玉です。
10円玉には斜面の下向きに力が働いています。
本当は重力と斜面から働く抗力が働いているのですが、力の合成法則の項目でやったように、それは斜面の下向きに働く力と同じです。

斜面に10円玉が乗っている

では、実際にその運動の様子を観察してみましょう。
それは下のような運動になるはずです。

斜面を転がる硬貨も、始めは止まっているのですから、力が働いている方向に加速しています。
この様子を、ノートや下敷きを使って、実際に10円玉を転がして自分で確かめてみてください。
これくらいなら、自分でやれると思います。


ここでは物の加速する様子を勉強しました。
それは、止まっている状態から力の働く方向へ動き出して、だんだんその速さが速くなっていく、という運動です。
それは一般的な運動の単なる特殊な場合なのですが、実例を見てよく理解しておくと物の動きをイメージするのにとても役に立ちます。


コメント
バネによる箱の運動のアプレットを作ってみたい。


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