物の動きのイメージ 〜等速直線運動〜

ここでは等速直線運動を説明します。
等速直線運動とは、物に力が働いていないか、物に働いている力がつり合っている時に起きる運動です。
物に働いている力がつり合っていれば、物は加速も減速もせず、今の速度を維持するはずですね。


物に力が働いていれば、その物の動き方が変わります。
動いている方向と同じ向きに働けば加速しますし、逆向きに働けば減速します。
なら、力が働いていないか、働いているけど打ち消しあっている時はどうなるのでしょうか。
もちろん、加速も減速もしません。
後ろから押されているわけでも、引っ張られているわけでもないからです。
そうなると、そのままの速度を保つことになります。
この、そのままの速度で進む運動を、等速直線運動と呼びます。
これは読んで字のごとく、直線上を同じ速さで動く運動のことです。
動く速度が変わらないのなら、速さは一定だし、まっすぐ進みますね。


さて、この等速直線運動ですが、本当にそんな現象があるのかと言われると、よく分からないような気がします。
なぜなら、物に働いている力を完全に打ち消すことなど事実上不可能だからです。
まず、地上にある物には必ず重力が働きます。
これを打ち消すには、上から物で吊るなり、下から板で支えたりしないといけません。
その力が完全に重力と同じ、なんてことがあるんでしょうか。 ただ、机の上に置いただけでは、ちょっとした振動で机が揺れて、とてもじゃないですが完全に重力と同じ力を働かせることは無理だと思います。
また、床の上を滑っている物には摩擦が働きます。
この摩擦と完全に同じ力で押すことで、摩擦を打ち消して物を等速直線運動させることができますが、本当にそんなことできるでしょうか。
ちょっと強すぎたり、ちょっと弱すぎたりして、本当に少しだけ加速したり減速したりするのが普通のような気がします。

ここでは、実験の大変さを強調したいわけではなくて、まだ誰もすべての力が完全に打ち消しあった時の運動なんて見たこと無いということを強調したいのです。
まだ見たことが無いのですから、実際にどうなっているのかは分かりません。
気の遠くなるような精度で測定されてはいるかもしれませんが、それでも完全ということはありません。
という事は、もしかしたら、完全に力が打ち消された状態でも、物がちょっと動いている、という事があるかもしれません。
等速直線運動という概念は、本質的に存在しないかもしれません。
ですが、ここではそんな難しい事は考えないで、あるものとして扱います。
世の中は本当に分からないことだらけです。


では、実際に等速直線運動の例を見てみましょう。
まずは減速運動です。

箱が床を滑っています。
床には摩擦があるので箱の速さはどんどん遅くなっていき、最後には止まります。
前項でやった減速運動の例です。
では、この摩擦力がもっと弱かったらどうなるでしょうか。
減速させる力が減るのですから、止まるまでにもっと時間がかかるようになりますね。

この調子でどんどん摩擦力が弱くなって、まったく働かなくなったら、箱は止まることなく、まっすぐ進み続けるでしょう。
これが等速直線運動です。

今の場合も箱には重力が働いていて、床からの抗力と打ち消しあっています。
箱に働いている力がすべて打ち消しあっているので、箱は等速直線運動をします。
箱に働く力が打ち消しあえばいいので、別に床から摩擦力が働いていても、その摩擦力とぴったり同じ大きさの力で後ろから箱を押せば、箱は等速直線運動をするはずです。
ですが、ここではイメージしやすいように、摩擦の無い例を上げました。
こういう例は、実際の生活の中で見たいなら、ゲームセンターに時々あるエアホッケーをやれば見れます。
エアホッケーでは、パックが空中に浮いているので、床からの摩擦は無く、空気による摩擦しかありません。
そのおかげで、とても等速直線運動に近い運動を見ることができます。


最後にボールが斜面を下っていって、斜面が終わって摩擦の無い床のうえを等速直線運動する例を上げておきます。
ボールには重力と床からの抗力が働いています。
摩擦は無いものとします。
はじめはボールは斜面にあるので、抗力は重力と打ち消しあわず、ボールは斜面を下る方向に加速運動をします。
加速運動の項目でやりました。

斜面にボールが置いてある

ボールが床の上を動いている

そして斜面を下り終わると、今度は床からの抗力が完全に重力を打ち消してくれるので等速直線運動を始めます。
床と斜面の境目がどうなっているかでちょっと変わってくるかと思いますが、きれいに上手くつながっていて、斜面を滑ってきたボールがガチンと床にぶつかったりしないならそうなります。。
これは、物への力の働き方が途中で変わることで運動の様子が変わる、最初の例です。

この運動をもう少し詳しく解説します。
ボールは始め止まっています。
それが重力と抗力によって斜面に沿って下方向に加速されます。
そして斜面を下りきると今度は平らな床の上を動くようになります。
床は滑らかなので、近似的に摩擦は無いものとしています。
なので、床の上ではボールの速度は変化しません。
動く向きも変わらなければ、速くも遅くもなりません。
つまり等速直線運動をします。

ここで気をつけて欲しいのは、斜面を下り終えた時点でボールはある程度の速さで動いているのでその後力が働かなくても動き続けるということです。
床の上ではボールに働く力はすべて打ち消し合っているので、ボールは速くも遅くもなりません。
ということはつまり、そのままの速さを維持するということですね。

斜面の上にあるうちは、ボールに働いている力は打ち消されていないので、加速運動をします。
それが床の上に来ると、ボールに働く力が打ち消されてしまうので等速直線運動を始めます。
このように、ボールに働く力が変わると運動の様子が変わるということをよく覚えておいてください。


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