物理に必要な数学 〜微分〜

ここでは微分を数学的に厳密でない形で説明します。
数学的に厳密な話は、少し難しいのでよそで勉強してください。
それでも物理で使うのには十分な理解が得られると思います。
前回の項目では関数とそのグラフについて勉強しました。
ここでは微分という数学的な考え方について勉強します。
微分とは関数の変化の具合という性質について深く考えるための数学です。


さて、前回までで関数とそのグラフについて十分よく分かったと思います。
例えばy=x^2という関数があります。
この関数は、ある数をその2乗に対応させる対応規則です。
それをグラフに描くと下のようになります。

それでは、この関数の変化の具合をよく調べていきます。
そのために、傾きというものを考えます。
ここで言う傾きとは、日常生活で使うのと同じ意味で、どれくらい坂が急か、ということです。
坂が急なら傾きがきついし、平らなら傾きはゆるいということになります。
今考えるのは関数の傾きです。
関数というのは数に数を対応させる対応規則のことですから、単に数字の上での関係のことです。
それと坂が急か、ゆるいか、といった傾きがどう関係するのか、少し不思議に思うかもしれません。
ですが、関数をグラフに描いて考えてみるとよく分かるようになります。

関数において傾きとは、関数で対応させる前の2つのある数の差で、それらの2つの数を関数で対応させた後の数の差を割ったものです。
代数で書くとこうなります。
y1=f(x1),y2=f(x2)のとき、傾きとは(y1-y2)/(x1-x2)のことである。
下の図を見れば分かりますが、これは関数を平面にグラフで描いた時の、考えている数の間の傾きになります。

図貼り付け予定地。

これは、つまるところ、xがある程度増えた時、yはどれくらい増えるのか、ということを考えているということです。
もっと直感的な言い方をすると、xが横に動いた時、yはどれくらい縦に動くのか、ということです。
これは日常的な傾きの考え方と同じですね。
坂の急さというのは、坂の横から見ると、横に進む距離に対して、どれくらいの高さを昇らないといけないのか、ということです。
もし横に進んでもほとんど高さが変わらないならゆるい坂だし、高さが急に変わるならきつい坂です。

坂の図貼り付け予定地。

それでは実際にグラフの傾きを計算してみましょう。
例えばこの関数でxが1のときに対応する点と、xが5のときに対応する点について傾きを計算してみましょう。
xが1のときはyは1×1で1、xが5のときはyは5×5で25です。
xの差は5−1で4、yの差は25−1で24、それらを割り算すると24/4で6になります。
今の場合は傾きは6です。
下のアプレットでいろいろな場合について計算してみてください。


y=x^2のグラフが描いてあります。
このグラフの上に点を打つことができます。
順番はどちらでもいいですが、まず左下にある箱の中に数字を書き込んでエンターキーを押してみてください。
そうすると、1個めの点のxの値を決めることができます。
それに対応するyの値をプログラムが計算してくれて、その点をグラフの上に打ってくれます。
そしたら、x軸の上をクリックして、2個めの点を打ってみてください。
プログラムがその2点の間の傾きを計算してくれます。
計算の様子は右下に書かれています。
1個めの点をまず決め、グラフの上のさまざまな部分をクリックして、その点との間の傾きを計算してみてください。
しばらくやってみて、だいたいの傾向が分かったら、1個めの点の位置を変えてまた同じように計算してみてください。

自分でいろいろと調べてみるのが面白いと思いますが、一応、詳しく調べてみて欲しい性質について、ここで触れておきます。
まず、1個めの点をx=0のところに打ってみてください。
そして2個めの点をさまざまなところに打ってみてください。
そうすると、xが正に大きくなると傾きも大きくなることが分かりますね。
図に描かれているの三角形の左下の角度を見てもそれは分かります。
また、xが負の場所に点を打つと、傾きも負の値になるのが分かると思います。
傾きが負、というのは、xが増えるとyが減るということです。
確かにこの関数では、xが負の場合、それが0に近づくにつれて、つまりだんだん数字が大きくなるにつれて、yの値も減っていきます。

他にも、点1と点2の位置を入れ替えても傾きが変わらないことを確かめて欲しいです。
つまり、点1のxが1で、点2のxが5にあるときも、点1のxが5で、点2のxが1にあるときも傾きは同じになります。
それは分母と分子に(−1)を掛ければ、2つの点の位置を取り替えた場合の傾きになるのですが、分母と分子に同じ数を掛けても分数は変わらないためです。

また、これから微分を考えていくのに重要になってくるのですが、2つの点の位置が近づいていくと、その間を結んだ線が、グラフの上に重なるようになることを確かめて欲しいです。
2つの点の間が離れていると、グラフとその点の間を結んだ線はグラフとはずいぶん違ったところを通りますが、それが近づいていくとほとんど同じところを通るようになります。
これは、実際のグラフも、2点を結んだただの線も、ほとんど違いがなくなってくるということです。
つまり、元の関数を2点をただ結んだだけの線で近似できるということです。
これは後々重要になってきます。

あと、2つの点が近づいていっても、傾きは別に小さな数字にはならないことも確かめておいて欲しいです。
2つの点の間の距離が小さくなっていくと、それらの点のxの差もyの差もほとんどなくなってきます。
つまり横にも縦にもちょっとしか差がなくなってきます。
それでも、それらの点の間の傾きは小さくはなりません。
それは、傾きは割り算で計算されるので、100を50で割っても0.02を0.01で割ってもどちらも2になる、という性質からきます。
とにかく、横に動いたときにどれだけ縦に動くか、その比率だけが重要なのです。


それでは微分について考えていきます。。
その前に関数の傾きについてもう少し詳しくみていきます。
そのために、まずはこの関数の中から代表的な部分を選んでいきます。
とりあえず、xが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の時のyがどうなるかを考えていきます。
本当は、xが整数の時全部の場合を考えたいのですが、それは具体的に書き出すのが大変なので、とりあえず10までだけを考えてみます。
この時、この関数で対応する数は次のようになります。

0→0
1→1
2→4
3→9
4→16
5→25
6→36
7→49
8→64
9→81
10→100

グラフで描くと上の方に描いてあるグラフのようになります。
ここまでは前回さんざんやった内容なので、分かると思います。
それはいいのですが、ここではこれらの数字を使って、新しい関数を作ってみます。
それは、あるxに、関数でそのxに対応する点とその次のxに対応する点との間の傾きを対応させる、という関数です。
今は0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10だけを考えているので、0の次の数といったら1だし、1の次は2です。
そして傾きを計算するときの分母は常に1です。
それでは実際に計算してみます。

0→1−0=1
1→4−1=3
2→9−4=5
3→16−9=7
4→25−16=9
5→36−25=11
6→49−36=13
7→64−49=15
8→81−64=17
9→100−81=19

このように0に1、1に3、2に5、のように数字が対応していきます。
つまり、0にはy=x^2の関数でx=1の時の数字からx=0の時の数字を引いた数字を対応させるのです。
1×1−0×0=1−0=1なので、0には1が対応しています。
1にはx=2の時の数字からx=1の時の数字を引いた数字を対応させています。
つまり2×2−1×1=3です。
この調子でどんどん数を対応させていくのです。
そうすると、やはりこれも数と数の対応規則ですから関数になります。
この関数のグラフは次のようになります。


グラフの中に黒い丸で表されているのがこの関数で対応する数です。
他にも分かりやすくするためにy=x^2の関数と今傾きを考えている点、傾きを現す三角形も書き込んでいます。

さっきは0から9までの整数についてだけ考えました。
ですが、傾きを考える幅を変えて、他の場合を考えることもできます。
下のアプレットでは自分で自由に幅を変えることができます。
さらに、正の場合だけでなく、負の場合も計算できます。

さまざまな幅で計算することができますが、1より狭い幅で計算した場合、傾きを現す線はほとんども元のグラフと同じになります。
また、次のアプレットでは、実際に次の点との間の傾きを計算してそれをグラフに描いています。
黒い点がそれです。
これでいろいろな幅でこの関数を計算してみてください。

やってみれば分かりますが、計算する幅が狭くなればなるほど、多くの場合の点について考えています。
この調子でどんどん細かい幅を考えていくことができます。
そうすると、最後には普通の関数のように、点と点がつながった、1本の線になります。
もし、限りなく小さな幅を考えることができれば、無限に多くの点を考えることができるので、それは本質的に元の変数xと同じ数の点を考えることができます。

このように、ある関数に対して、あるxに関数で対応する点とそのすぐ隣の点の間の傾きを考える関数を元の関数から導くことができます。
これはある関数から導かれた関数なので導関数と呼ばれます。

ここで言う限りなく、とか無限にとか言うとだんだんと数学的にどういうことを言っているのかよく分からなくなってきます。
ここをちゃんとやるには、もうちょっと細かいところを考えないといけないのですが、そういう話が読みたい人は自分で勉強するようにしてください。
極限とか、ε−δ法とか、そういう話を調べていけば分かると思います。

このように傾きを考えることによって関数の変化の具合を調べることができます。
それでは様々な関数について導関数を考えていきましょう。
下のアプレットではさまざまな関数についてその導関数を計算できます。
自分で好きな関数を考えてその導関数を計算してみてください。

アプレット貼り付け予定地。


さて、これまでは1とか、0.1とかの小さな幅でグラフに点を打っていって、その間の傾きを考えてきました。
点は小さな幅で打っているので、それをグラフに打っていけばつながった一本の線のように見えますが、やはりそれは数学的には線ではなくて、とびとびの点の集まりです。
ここでは、数学的にある程度厳密な話をしていきたいと思います。
でも、どっちにせよ、あまり厳密な話ではないので、大体の感覚的な話になります。
それでも普通に物理で使うには十分な理解ができるので、とりあえず、という意味では十分だと思います。

さて、さっきまで傾きを考えるは幅が1とか0.1とかの具体的な数でした。
ですが、ここではそれをちょっと一般的に代数で表してみます。
そのちょっとの幅をdxで表すことにします。
これはdという代数とxという代数の掛け算ではなくて、dxという一つの数です。
これは畑という字が、火とと田という2つの文字を表しているのではなく、畑という1つの字を表しているのと同じです。
どうしてこんな風に表すかというと、それはxという変数の小さな幅について考えているということを分かりやすく表現したいからです。
他にも例えばyという変数の小さな幅はdyになるし、zとい変数ならdz、Sという変数ならdSと表します。
今はxという変数について考えているのでdxです。

今までやってきたのは、その小さな幅ごとに点を打っていって、ある点とその次の点の間の傾きを考えるといったことでした。
それを代数を使って表してみます。
ある点というのを、xで表してみます。
そうなると、そこからdxという小さな幅だけ離れた次の点はx+dxという数になります。
いままでは1とか0.1とかの決まった数で、ある点をxで表したらその次の点はx+1とかx+0.1になるのですが、今は小さな幅を代数で表しているのでこうなります。

それらの点を今の関数の対応規則で対応させ、その2つの点の間の傾きを計算してみます。
それらの点にある関数fで対応する数をf(x)とf(x+dx)で表します。
これは完全に一般的な書き方で、これだけではどんな関数なのか分からないので計算のしようがないのですが、とりあえず一般的な場合を書くことはできます。
では、傾きを計算すると、こうなります。
{f(x+dx)-f(x)}/{x+dx-(x)}={f(x+dx)-f(x)}/dx
これは完全に一般的な関係です。
どんな幅で傾きを考えるのかも、どんな関数について考えるかもまだ決まってい、完全に一般的な関係です。
これは、xが決まると2点の間の傾きを与えるという関数で、これを→を使って表すと次のようになります。
x→{f(x+dx)-f(x)}/dx
あるxに対して、このちょっと複雑な式の計算結果を対応させる、という関数です。

または、この関数をΔf(x)/ΔxとかΔf/ΔxとかΔy/Δxという風に分数を使って表すことができます。
これは普通はただ単にyとかを使って表すのを、わざわざ複雑にしただけです。
でもこれは、fという関数についてxがちょっと変化した時の傾きを考えている、ということを分かりやすくするためです。
だから、y=f(x)という風に、具体的に関数が分かっているときはΔy/Δxと書くことが多いです。
まあ、はじめは慣れないかもしれませんが、何度も見ているうちに慣れてきますので、それまで少しがまんしましょう。
これを使うとこうなります。
Δf/Δx={f(x+dx)-f(x)}/dx(ただしxはdxを整数倍した数)
やはりこれも、普段の関数の表現と同じように、あるxに対して、ある数が対応する、という意味です。
今までは関数で対応する先の変数はyだったのですが、それを少し複雑に書いただけで、本質的な部分はまったく代わりません。

それでは、実際に具体的な関数について、これらの関数を計算してみます。
まずはy=f(x)=x^2の関数について考えてみます。
さっきまで、具体的な幅で考えてきた関数です。
それを一般的な幅で計算してみます。
まず、xの次の点はx+dxになります。
それらにこの関数で対応する数はx×xと、(x+dx)×(x+dx)=x×x+2x×dx+dx×dxになります。
ただ単に、対応させる前の数を2乗しただけです。
つまり、f(x+dx)=x×x+2x×dx+dx×dxであり、f(x)=x×xであるということです。
これをさっき導いた一般的な式に代入します。
そうすると、{f(x+dx)-f(x)}/dx={x×x+2x×dx+dx×dx−x×x}/dx=2x+dxとなります。
つまり、Δy/Δx=2x+dxということです。

これを、具体的にdx=1のときにどうなるか計算してみます。
x→Δy/Δxのように書くと、次のようになります。
0→2×0+1=1
1→2×1+1=3
2→2×2+1=5
3→2×3+1=7
4→2×4+1=9
5→2×5+1=11
6→2×6+1=13
7→2×7+1=15
8→2×8+1=17
9→2×9+1=19
これは、上の方で、最初から幅1ごとに点を打っていって計算した傾きと完全に一致します。
先に幅を1だとして計算しても、初めは一般的に考えて、あとからそこに1を代入して計算しても、もちろん同じになります。

ですが、今求めたのは一般的な幅での傾きです。
dxは1でも3でも9でも、0.1でも0.01でも、0.0000000000000001でもいいのです。
なんでもいいのですが、大きな幅の場合を考えてもあまり意味はありません。
考えたいのはできるだけ小さい幅の場合の傾きです。
そして、求めた式をよく見ると、dxの影響はdxが小さくなっていけばいくほど少なくなっていくのが分かります。
なぜならΔy/Δx=2x+dxなのですから、例えばxが1でdxが0.0001のときは2.0001になります。
xが1でdxが0.0000001のときは2.0000001です。
この調子でどんどん小さな幅を考えればdxはどんどん0に近づいていきます。
なので、この際なので0だと思っておきます。
こういう、dxがものすごく小さい場合はΔy/Δxをdy/dxと書きます。
これは単なる書き方の習慣なので、どうしてそう書くのかなんて気にしないで覚えてください。
他にもいろいろな書き方があるのですが、とりあえず日本の高校でよく使われる書き方を紹介しておきます。
そうなると、dy/dx=2xとなります。
これはもはや、xという変数の取る数字の中から同じ幅で点を取っていって、そこでしか対応する数が計算できる関数ではなくて、普通の関数のように、考えている範囲内ならxがどんな数でも対応する数を計算できる関数です。
1とか0.1とかの、ある程度の幅について考えると、すべてのxについて傾きを考えることはできないのですが、今は0にものすごく近い、小さな数を考えているのでそうなります。

このあたりの論理がややあやふやなのですが、やはり厳密な論理は自分で勉強してください。
さっき、具体的にアプレットを使って計算したように、細かい幅を考えれば、普通の関数と同じように、つながった線に見えるようになるということが分かれば、物理に使うのには十分です。
ちなみに、ここでしたように、非常に小さい幅で関数の傾きを計算して導関数を求めることを微分と言います。
これが微分です。

それではさまざまな関数を微分して導関数を求めていきましょう。
とりあえずy=x^3の関数を微分してみます。
やはりやることはさっきと同じで、一般的な幅、dxについて傾きを計算して、幅はなんでもいいのですから、ものすごく小さな幅で計算したらどうなるかを考える、ということです。
まずは一般的な幅で計算すると、{f(x+dx)-f(x)}/dx={x^3+3x^2×dx+3x×(dx)^2+(dx)^3−x^3}/dx={3x^2×dx+3x×(dx)^2+(dx)^3}/dx=3x^2+3x×dx+(dx)^2となります。
そしてdxがものすごく小さい数だったら、やはり3x^2以外の部分からの影響はとても少なくなります。
例えばxが1でdxが0.0001だったら、3x×dxは0.0003だし、(dx)^2は0.0000001になります。
もっと小さな幅を考えれば、これらはどんどん小さくなっていきます。
なので、dy/dx=3x^2になります。

この調子で、一般的に、y=ax^n(aは実数のどれか、nは整数)のときにどうなるのかを考えることができるのですが、それは自分でやってみてください。
ちなみに答えはdy/dx=nax^(n-1)になります。
さらに、さまざまなxの累乗の和になっている関数、例えばy=5x^3+2x^4などの関数についても微分を考えることができます。
それも、おのおのの項について微分すれば正しい結果が得られます。


様々な微分の代数的な例もそのうち書きたい。
三角関数、指数関数


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