物理に必要な数学 〜積分〜

ここではやはり数学的に厳密でないやりかたで積分を説明します。
数学的に厳密なやりかたはよそで勉強してください。
特に物理において積分は、数学的に厳密なやり方で計算する必要がある例は本当にごくわずかで、大概の場合はコンピュータを使って数値的に計算します。
なので、実際にやることを見るという意味でも、あまり厳密でないやり方を紹介します。


ここでは積分について勉強します。
積分というのは大まかに言うとグラフの面積を求めるための数学です。
今まで様々な関数のグラフを見てきました。
ここでは、そのグラフの面積を求めていきます。

例えばy=x^2という関数とx軸で囲まれた図形の面積を求めて見ます。
つまり、下の図のような形の面積です。
この図形の面積を求めるには、どうしたらいいでしょうか。

イメージ貼り付け予定地。

とりあえず、少しいい加減に、大体の面積を求めて見ます。
そのために、図形をたくさんの細長い長方形で近似してみます。
長方形の右上の角は関数のグラフの上にあるようにします。
なぜなら、そうすれば長方形の長さがy=x^2の関数でxを対応させた先、つまり長方形の右下の角がある場所の表す 数字を2乗した数になるからです。
幅はどれだけ正確に計算したいかによって、自分で決めます。
たくさんの長方形を考えれば考えるほど、正確に図形の面積を計算することができます。

ここでは、とりあえず幅は1で計算してみます。
そうすると、長方形の面積は、左から順に1、4、9、16、25、36、49、64、81となります。
その合計は285で、これが大体の図形の面積です。
とりあえず大体の面積は求まったのですが、これは本当の面積よりも少し多いものになっています。
なぜなら、細長い長方形の一つ一つの、左上の角は求める図形の外側にあり、その分余計な面積を数えてしまうからです。
ですが、この誤差はどんどん細長い長方形を考えていけばなくなってきます。
試しに下のアプレットを使って見てください。
長方形の幅を自分で変えることができます。
細い長方形を使えば使うほど面積は小さくなります。
そして求めたい図形の面積に近づいていきます。
ちなみに厳密に数学的な計算で求めた面積は243になります。
幅1の9個の長方形の面積は285でしたから、差は42で(42/243)×100で、約17.3%になります。
それがどれくらい差がなくなっていくか、実際に自分でやって実感してみてください。


dnと書いてあるとなりの箱の中に半角英数字で数字をタイプしてエンターキーを押せばその数字の幅を持つ四角形をたくさん書けます。
使える一番小さい数字は0.1です。
使える一番大きな数字は9です。
自分で好きな数字を打ち込んで、試して見ましょう。
プログラムが自動でそれらの長方形の面積の合計を計算してくれます。
計算結果はAreaとかかれた隣の数字です。
これがあなたが好きに選んだ長方形の幅で図形の面積を近時して求めた図形の面積です。

この調子でどんどん長方形の幅を狭くしていけば、どんどん実際の面積に近づいていくと分かりますね。
この、どんどん近づいていく、という様子を数学的に厳密に考えると、厳密な面積を求めることができるのですが、その辺りの話はちょっと難しいのでわきに置いておきます。
それにとても簡単な例を除いて、大概の物理的に興味のある例において、そういう数学的に厳密な扱いをすることはできません。
そういうときはさっきやったように、小さな幅をもつ長方形を考えていくのです。
なので、積分とはそういう風に細い長方形をひたすら足していく作業だと思っていれば十分だと思います。
ただ、数学的に厳密な話も、いつかは勉強して欲しいと思います。


このように、積分とはグラフの面積を求めることです。
それが実は微分と関係してくるのですが、その説明の前に、関数のもつとある性質について説明します。
それは、差をひたすら足していくと関数で対応する数になる、という性質です。

前項において、y=x^2という関数を幅1ごとに点を打っていってその間の傾きを考える関数を考えました。
それは次のようになりました。
0→1
1→3
2→5
3→7
4→9
5→11
6→13
7→15
8→17
9→19
これらは、あるxとその次の点の間の傾きです。
幅が1なので、それは単なる、次の点との差になります。
あるxに対応するyをその次のxに対応するyから引いた値です。
つまり、xが1増えたときにどれだけyが増えるか、です。
ということは、あるxに対応するyを知りたいなら、その1つ前のxが対応するyにそのxとの間の差を足せばいいのです。
その1つ前のxに対応するyが分からなかったら、さらにその1つ前のxが対応するyに、さらに1つ前のxと1つ前のxとの間の差を足せばいいのです。
ということは、あるxに関数で対応する数字が欲しいと思ったら、もうすでに関数で対応する数が分かっているxを基準にして、そこからそこまでのすべての差を、その基準になるxが関数で対応する数に足せばいいのです。

これだけではよく分からないかと思うので具体的に考えていきます。
関数はやはり、y=x^2について考えていきます。
とりあえず0を基準にとります。
例えば、xが3のときにこの関数で対応する数が知りたければ、xが0のときにこの関数で対応する数に0から3の1つ前の点までの差を全部足せばいいのです。
これは、元の関数から作った、傾きを表す関数で、0、1、2に対応する数と、元の関数で0に対応する数をすべて足す、ということです。
傾きを表す関数で0に対応するのは1、1に対応するのは3、2に対応するのは5で、元の関数で0に対応するのは0です。
つまり、0+1+3+5=9となります。
これは3×3と同じ数になり、つまり元の関数で対応する数と同じです。
他の数でもやってみると、やはり正しく元の関数で対応する数になります。

0→0
1→0+1=1
2→0+1+3=4
3→0+1+3+5=9
4→0+1+3+5+7=16
5→0+1+3+5+7+9=25
6→0+1+3+5+7+9+11=36
7→0+1+3+5+7+9+11+13=49
8→0+1+3+5+7+9+11+13+15=64
9→0+1+3+5+7+9+11+13+15+17=81

この性質は、考えてみれば当たり前で、幅1ごとのxについて、関数でそのx対応する数から一つ後の点に対応する数を引いたもの、と定義しているのだから、もちろん関数で一つ前の点に対応する数にその点に対応する傾きを足せば、元に戻ります。
それを次々とやっていけば、好きなxに対応する数がもとまるわけです。
下のアプレットを見れば、その様子がもっとよく分かると思います。


左下にある箱に半角英数字を書き込んでエンターキーを押すと、そのxまでの差が図に描かれます。
その差は数字ではなくて、黒い棒として書き込まれます。
グラフの上での距離は、数字の大きさの差を表しているので、棒の長さがそのまま差の大きさになります。
そして、その差を表している棒の長さの合計と、今のxに関数で対応する数を表している線の長さが同じになるというのが分かると思います。
つまり今のxの値までのすべての差を合計すると、そのxに関数で対応する数が得られるということです。

このように、差を足しさえすれば関数の値を求めることができます。
さっきのはたまたま差を考える幅は1でしたが、別に差さえ求まればどんな幅で考えても当然同じになります。
下のアプレットでは関数で対応する数の差を考える幅を自分で決めることができます。
そして、その2つの点の間の差を計算して、それをグラフに描いてくれます。
これは傾きではなくて、ただの差です。
その差を全部足すと関数で対応する数になる様子が分かると思います。


画面左下の箱の中に数字を書き込んでエンターキーを押すと差を計算する幅を決められます。
最小の数字は0.1で最大は9です。
そしてx軸の近くをクリックすると、その値までの差の合計を計算してくれます。

いろいろな場合についてやってみて欲しいのですが、特にどこまでの差の合計を計算するかは変えないで、差を計算する幅だけを変えてみてどうなるかを見てみて欲しいと思います。
1回で大きな差を足すか、2回に分けて小さな差を足すかの違いはあるかもしれませんが、結局全部合計したらさっきと同じ値になることを確かめて欲しいです。


このように、差を足し続ければ関数で対応する数を計算することができます。
そして前回やったような傾きを表す関数が分かっていれば、そこから差を計算することができます。
ここではそれを見ていきます。

一般的な幅で傾きを考えるとΔf/Δx={f(x+dx)-f(x)}/dxとなりました。
yの差とはf(x+dx)-f(x)のことです。
そしてそれはΔf/Δx×dxと同じ数字になります。
つまり、傾きに幅を掛けると関数の差になるのです。
その様子を下のアプレットで見てみてください。

アプレット貼り付け予定地。

そしてその差を足し続けていけば関数で対応する数字が計算できます。
これは傾きを表す関数しか分かっていないときに、その元になった関数で対応する数が計算できるということをです。
もしあらかじめΔf/Δxとf(x)とdxが分かっていたとしたら、これを使って逆に考えると、f(x+dx)=Δf/Δx×dx+f(x)を計算することによって、xの次の点にこの関数で対応する数が分かります。
ということは、あらかじめ基準となる点のxとf(x)が分かっていれば、あとはそこから順番に計算していけば、どのxでもこの関数で対応する数を計算することができます。
その様子を下のアプレットで見てみてください。

アプレット貼り付け予定地。

もちろんdxがものすごく小さい場合も考えることができます。
dxが小さかったら、Δf/Δxはdy/dxになって導関数になります。
導関数について同じことをすると、それは導関数の積分になるのです。


さて、実はこの、グラフの傾きを表す関数からグラフの差を求めて、それをひたすら足していく、という作業が導関数の積分とまったく同じ作業となっているのです。
ここでは、導関数を積分すると、微分する前の関数に戻ることを説明します。
積分というのは、さっき見たようにグラフの面積を細長いたくさんの長方形を考えることで計算する、計算方法のことなのですが、導関数の面積を求めると、微分の計算を打ち消して、元の関数に戻るのです。
だから、導関数が変数を利用した表現方法で分かっているときは、どんな関数を微分したらその関数になるか、その元の関数を見つければ、それがその関数を積分したものになるのです。

Δf/Δx={f(x+dx)-f(x)}/dxを使って、ある数に元の関数で対応する数字を見つけることができるということはわかったと思います。
ここでは、導関数を使って同じことをしてみます。
dxをものすごく小さくしていけば、Δf/Δxは導関数になって、f(x+dx)=dy/dx×dx+f(x)となります。
dy/dxはちょっと変な書き方をしていますが、ようするにただの関数です。
そしてdxというのはxの小さな幅です。
となると、dy/dx×dxというのは導関数の値を右上の角になるような長方形の面積になります。
dy/dxが縦幅でdxが横幅になります。

説明のアプレット貼り付け予定地。

そして、元の関数を得るためにはdy/dx×dxをひたすら足していくわけですから、これはさっきやった積分の操作そのものです。
つまり、導関数を積分したら微分する前の関数に戻るのです。
この、積分して得られる関数を原始関数と呼びます。

さっき面積を求めたのはy=x^2という関数でした。
微分してこの関数になる関数は一体どんな関数か、考えて見ると、y=(1/3)x^3ですね。
実際に微分するとy=x^2に戻ります。
なので、積分した関数はy=(1/3)x^3です。

いろいろな関数の原始関数の例。


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