第3章 数学2 対応関係

要約

対応関係とは物事を認識するために必要な根本的な概念である。日常でも様々な対応関係を使っている。数学では写像や関数といった対応関係を特別に詳しく扱う。

目次

3.1 対応関係とは

3.1.1 身近な対応関係

前回は数学とは論理的な構造のことであることを勉強しました。
今回はもう少し具体的にどのような構造があるのかについて解説していきます。
数学でよく出てくる重要な構造の中に対応関係という構造があります。
今回は対応関係について重点的に解説します。

対応関係とはある物とある物の間になんらかの対応をつけることです。
対応というのは、もっと簡単に言うと関連付けのことです。
ある物が別のある物と何らかの関連を持っている時、そこには対応関係がある、と言います。
この対応関係というのは非常に一般的な関係で、もはや認識する意識するという行為と物事に対応関係を見つける行為はほぼ同義であるくらいに根本的な関係です。
例えば物には名前が付いています。
机、椅子、空、風、人の名前、などです。
それらは日本語とその物、人物の間にある対応関係です。
机を机と呼ぼうが、英語でtableと呼ぼうが、机という物はそこにあって変わりません。
これは物と言葉の間の対応関係です。
それがどういう物か分かっているのに、それに対応する言葉が出てこなくてもどかしい思いをしたことは誰にでもあると思います。
そういう時は、物と言葉の間の対応関係を探しているのです。

3.2 対応関係の構造

3.2.1 出席番号の構造

このように対応関係というのは人間の意識の根源的な部分を担っています。
ですがここでは、そういう根源的な関係はひとまず横に置いておいて、もっと分かりやすい例を考えていきます。
例えば学生はクラスで出席番号を与えられます。
これは生徒と数字の間の対応関係です。
出席番号1番の人は誰それ、2番の人は誰それ、と番号が分かればそれが誰のことなのかが分かるようになっています。
それは物理的な実体として存在する机とか椅子とかの物に対して名前を与えるのと一緒です。
ある番号に対してある学生が対応するのです。
さて、こういう対応関係が存在するというのはいいと思います。
これから、この対応関係の持つ構造についてもっと詳しく考えていきます。
出席番号にはある程度の規則性があるのが普通です。
例えばあいうえお順につけていくなどです。
あいうえお順であれば、出席番号1番の人は安部とか伊藤とかそういう苗字をした人になります。
田中は真ん中ぐらいになります。
さて、安部君が出席番号1番、伊藤君が2番である場合を考えてみます。
この2人は1番と2番ですから、もちろん出席番号の上では隣り合っています。
もしクラスの席順が出席番号順なら、席順の上でも隣り合っているはずです。
ですが近いのは席だけではありません。
名前そのものも似ているので、ある種の近さがあります。
例えば「あべ」と「いとう」なら最初の文字が「あ」と「い」なので、五十音の上であの次の文字、という意味で隣り合っています。
このように、出席番号の上で近い学生は名前も近いのです。
例えば出席番号10番の人が「佐藤まこ」だったら、11番の人は「佐藤まこと」だったりします。
1字違いで、非常に近い名前です。
こういう事がすべての番号で起こっています。
1字違いということは少ないかもしれませんが、多かれ少なかれ近い名前が番号に沿って並んでいくことになります。
というよりも、名前の近い順に番号をふっていった物があいうえお順です。
あいうえお順に出席番号をふるというのは、こういう事なのですが、それをさらに深く考えてみます。
今、学生の名前と出席番号の間に対応関係があります。
1番は安部、2番は伊藤、といった具合にです。
一方、対応関係のあるなしに関わらず、学生の名前の間には近さという概念があります。
名前が似ている時、近い名前と言います。
「佐藤まこ」と「佐藤まこと」はとても近い名前です。
似てると言う代わりに、あえて近いという言葉を使っていますが、別に不自然ではありません。
そして数字にも近いという概念は当てはまります。
1と2の差は1ですが、1と3の差は2です。
1から見たら2よりも3の方が遠いということになります。
このように、対応関係とは関係なく数字や名前の間には近さという概念があります。
ここで、あらかじめ近い名前を持つ2人の学生は、果たしてこの対応関係でどのような数字におのおの対応していくか、という問題を考えてみます。
つまり、安部君と伊藤君や、佐藤君と斉藤君は名前の上で近いですが、出席番号の数字の上でもやはり近いのかどうなのか、という問題です。
具体例を考えれば、名前が近い学生同士は出席番号の数字も近くなることが分かります。
どこからどこまでが近くて、どこからどこからが遠いのかという、感覚的な問題はありますが、大まかに言えば名前が近い時は出席番号も近くなります。
例えばクラスに阿部君が2人居て、伊藤君が3人居たとします。
他に「あ」や「い」で始まる苗字を持った人が居ないとすると、安部君と伊藤君の出席番号は最大でも1と5の差である4以上離れることはありません。
これが何を意味するかというと、この学生と出席番号の対応関係は近さという関係を保存する対応関係だ、ということです。
対応関係で番号に対応させる前に近い関係にある2人の学生は、対応関係で番号に対応させた後にも近い関係にある、ということです。
この対応関係には、こういう特別な構造があるのです。
他にもこの対応関係には沢山の特徴があるでしょうが、ひとまずここで構造の解析を終えます。
このようにある対応関係がある時、それがどのような性質を持った対応関係なのかを調べることができます。
対応関係そのものを数学の対象とすることができるのです。
ちなみにここで見たような、近さを保存する対応関係というのは、連続性という概念と非常に密接な関連を持っています。

3.3 写像

3.3.1 写像の例

このように世の中には様々な対応関係があり、それは様々な構造を持っています。
その対応関係の構造には様々な理屈、法則があり、それを数学は扱います。
このような対応関係の中に写像と呼ばれるものがあります。
例えば上の例だと、学生と出席番号の間に対応関係は、じつは学生に出席番号を対応させる写像です。
写像とは、ある物の集まりの中の1つ1つの物に、別の何かの集まりの中のどれか1つを対応づける、特殊な対応関係のことです。
これは単なる呼び方の風習ですが、写像というのは読んで字のごとく、何かを写して映像を描き出すという意味が見て取れるので、覚えて使うようにしたらいいと思います。
写像を考える時には常に、この対応関係で対応させる元の物の集まりと、この対応関係で対応させる先の物の集まり、が重要になります。
例えば上の例だと対応させる元は学生だし、対応させる先は番号です。
学生一人一人に1つの番号が対応しています。
逆に1つ1つの番号には一人一人の学生が対応しています。
対応というと1つの物に他の1つの物を対応させる様子を思い浮かべるかもしれません。
たくさんの人がいて、その一人一人に何か別々の物を配るような印象です。
このように考えている物が1対1に対応付いている場合もありますが、一般的にはそうとも言えません。
ここではこのような、一般的な写像の例をもっと見ていきます。
例えば人間には誰しも誕生日があります。
これも人間という物の集まりに日付という数字を対応させているのだから、写像です。
生まれた年を考えずに日付だけを考えれば、それは1月1日から12月31日までのどれかの日になります。
うるう年は考慮に入れなければ365種類の日付のうちのどれかの日です。
人間はうん十億人と居るので、そのうん十億の人々に対して365種類しかない日付が必ず1つ対応していることになります。
対応する元の数がうん十億なのに対応する先の数は365種類しかないのですから、これは非常に沢山の重複のある対応関係です。
このように、対応する元の中では違う物でも、対応する先が同じということもあります。
こういった例はいくらでもあります。
例えば品物と値段の対応を考えた時、違った品物にも同じ値段がついていることがありますし、家族を兄や妹といった分類に対応させようとした時、自分より年上ならすべて兄なので複数いることもあります。
このように対応関係で対応させる前は違うのに、対応させた後は同じになってしまうことがあります。
これはある意味、バラバラの物を分類していることになります。
うん十億人の人間達も誕生日を基準に分類分けしたら365種類に分類できるのです。
また、あらかじめ用意した対応する先の物の集まりの中の一部しか今の対応関係で使われず、対応する元がない場合もあります。
例えば学校の図書室の本について、どの学生がどの本を借りているかを調べたとします。
そうしたら、学生と本の間に対応関係を考えることができます。
ある学生がこの本を借りていて、別の学生は違う本を借りていて、という風にです。
この写像は本を借りている学生に対して図書室にある本を対応させる対応関係です。
ですが、図書室の本が一度にすべて借りられることはないので、対応関係で使われずに余る本が出てきます。
これはある意味で、対応させる元の物の集まりよりも、対応させる先の物の方が多いということを表しています。
対応させる先が沢山あるから、一部が余るのです。
このように世の中には様々な写像が存在します。
これまでいくつかその例を見てきました。
写像という物が存在することが分かったのですから、その構造について少し調べてみます。
写像というのはある物に別のある物を1つ対応させる対応関係です。
対応させる元も先も、どちらも物なのですから、対応の先と元を入れ替えたら一体どんなことが起こるかを見てみます。
例えば上の例で、人間と誕生日の対応がありました。
対応させる元の集まりはうん十億人の人間で、対応させる先の集まりは365種類の日付です。
これを逆転させて、365種類の日付にうん十億人の人間を対応させることを考えます。
そうなると、例えば1月1日に対して、1月1日を誕生日に持つ人間を対応させることになります。
1月1日を誕生日に持つ人間はうん千万人居るでしょうから、1つの日付に沢山の人間が対応します。
1つの物に対応する先の物が沢山あるので、これは写像ではありません。
写像は1つの物に1つの物が対応する対応関係なので、これは写像として扱える範囲を超えた、もっと一般的な対応関係です。
では、このように対応させる元と先を入れ替えて、写像を逆転させた対応関係が写像になるような場合はどんな時でしょうか。
まず対応させる元の集まりに対して1対1に対応させた先の物が対応する必要があります。
でないと元と先を逆転させた時に1つの物に2つの物が対応するので写像ではなくなります。
その上でさらに対応する先の集まりの中の全ての物がこの対応で使われていないといけません。
こういう特別な写像の場合のみ、写像を逆転させることができるのです。
この逆転した写像のことを逆写像と呼びます。
これは、元の集まりを写像で対応させて対応する物を見つけた後に、元に戻したくなったら元に戻せるということを意味しています。
例えば学生と出席番号の対応関係の場合、対応する元の集まりは1クラス内の学生であり、対応する先の集まりは1から始まるクラス人数分の数字です。
仮に1から40までの数字だとしておきます。
この場合、この対応関係は全ての学生一人一人に対応する数字があるので写像であり、また、全ての学生が違った数字を振り分けられる写像です。
ここで対応させる元と先を入れ替えてみると、1から40までの数字にある学生を対応させる写像になります。
1から40まで全ての数字に一人だけの学生が対応するので、この対応関係は写像になります。
なので逆写像が存在します。
この写像は出席番号に学生を対応させる写像です。
つまりある学生の出席番号を調べるのが元の写像だとすると、逆写像は出席番号から学生を見つける写像です。
学生の名前を扱う代わりに出席番号を使って考えて、その後でその番号に対応する学生を見つけようと思ったらこの写像を使うのです。
例えばクラス内の学生をいくつかのグループに分けようと考えた時、いちいち誰それと誰それを1グループにする、と言わないで出席番号を使って1番から5番までの人を1つのグループにし、次は6番から10番までの人をグループにしていって、5人ずつ8つのグループを作ったりします。
そうやって数字の上でグループ分けをし、実際に誰と誰が同じグループにいるのか名前を確認したい時は逆写像を使って出席番号にどの学生の名前が対応しているのかを確認するのです。
このように逆写像がある写像は、元の物の集まりでは行いにくい作業を行う時に写像でもっと分かりやすい表現に写し、そこで作業を行って終わったら元に戻すような時に便利です。
これで写像には逆写像という写像が存在することがあって、存在するために元の写像が満たすべき条件が分かりました。
これは1つの写像の持つ構造です。
次は2つの写像があった時に、それらの間にどのような構造があるかを見てみます。
ここに2つの写像があったとします。
その写像は、1つ目の写像で対応する先の集まりと2つ目の写像で対応させる元の集まりが同じであったとします。
例えば出席番号に学生を対応させる写像と、学生に誕生日を対応させる写像などです。
この場合、1つ目の写像で対応する先は学生で、2つ目の写像で対応させる元も学生です。
なので、出席番号を最初の写像で学生に対応させた後、すぐにその学生に誕生日を対応させることができます。
これは、出席番号1番の学生を見つけ、その学生の誕生日を調べるのと同じです。
こうやっておのおのの番号にどの学生が対応し、その学生の誕生日がいつなのかを調べて、途中の学生の部分をはぶいて出席番号と誕生日だけに注目すれば結果としては出席番号に日付を対応させる写像ができることになります。
これは2つの写像を続けて適用することによって出来た新しい写像です。
このようにいくつかの写像を連結して新しく作った写像には合成写像という名前がついています。
これは逆に考えれば、ある写像があった時にそれを何かもっと基本的な写像が合成された物と見て、その構造を解読するのに使えます。
例えば先ほどの例だと、始めに1から40までのただの数字と、それに対応する日付が与えられても何のことか分かりませんが、間に学生を挟んで出席番号と誕生日だと読み解けばその意味が分かるわけです。
このように対応関係そのものの構造を解析することができます。

3.4 関数

3.4.1 関数の構造

今まで様々な写像の例を見てきました。
このように写像、対応関係は日常生活のいたるところに存在しています。
ところで写像の対応させる元と対応させる先がどちらも数字である場合、それを特別に関数と呼びます。
関数は数学で非常によく使われる写像です。
ここではその例を上げていきます。
例えばテストの点数に成績を対応させる関数です。
テストの点数は0から100の間の数字です。
それに対して何段階評価かによりますが、成績の数字が対応します。
5段階なら1から5までの数字が対応します。
テストのおのおのの点数に対して成績の数字が対応するのですから、これは関数になります。
他にも入学試験の合否判定も関数とみることができます。
入試は試験のテストの点数に合否の結果を対応させる写像です。
ですが、合格、不合格に対してあえて数字を当て、不合格を0、合格を1で表したらそれは関数になります。
受験者の点数を高い順に並べたら、ある点数より上にはすべて1、下にはすべて0を対応させる関数です。
関数には特別な書き方があります。
関数の種類をfで表し関数で対応させる元の数字はただの数字、その数字にこの関数で対応する先の数字はf(数字)と表します。
例えば上のテストの点数を成績に対応させる関数をfで表すと、例えばf(15)は1のことです。
fというのは今考えている関数です。
15というのはこの関数で対応させる元のテストの点数です。
f(15)というのはこの関数で15という点数に対応する先の成績を表す数字で、今は1です。
つまりf(15)=1ということになります。
他にも、例えばf(24)=2だろうし、f(56)=3でしょう。
つまり、テストの点数が24なら成績評価は2で、56なら3だという意味です。
このように数字に対して別の数字を対応させる対応関係のことを関数と呼ぶのです。
それでは、他にも様々な関数を見ていきます。
これからは対応させる元の数は実数すべてとします。
実数すべてをひとまずxという代数で表します。
この条件で、上で表したような合否判定をする関数に似た関数を表すと、負の数の時は0に対応し、0以上の数の時は1に対応するような関数を考えることができます。
こういった関数も数字に数字が対応しているので、もちろん関数です。
これはステップ関数とか階段関数とか呼ばれる関数です。
fを使ってこの関数を表せば、
f(x)=0、ただしxが負の時
f(x)=1、ただしxが0以上の時
と書くことによってこの関数を表すことができます。
xに具体的な数字を代入したらf(-1)=0だしf(0.5)=1だしf(-30)=0だしf(304)=1ということになります。
負の数の時は0で、0より大きな数になると突然1に対応するようになるわけです。
特殊なテストを作って、合否の境目がちょうど0点になるようなテストを作り、0以上の点数を取っている学生には合格として1をつけ、負の点数を取っている学生に不合格をつけるような感覚です。
0より大きい点数なら何点であっても、千点であっても万点であっても合格は合格なので同じことになり、関数で対応する数はずっと1のまま、ということになります。
逆に1点足りないだけでも不合格は不合格なので0点のぎりぎり近くまでこの関数で対応する数は0のままです。
そして0のところで突然、関数で対応する数が変わります。
こういう関数は、ある意味で何かのスイッチを入れるような関数です。
ある瞬間まではずっと0で、スイッチが入ったら突然1になるような感覚です。
関数とは数と数の間にある写像のことなので、このような対応関係ももちろん関数です。
ですが、中学、高校の数学の授業では見慣れないかもしれません。
これからは中学、高校の授業で見慣れた定数関数、1次関数、2次関数、正弦関数、余弦関数について説明していきます。
これらの関数は物理でもよく出てくるからです。
定数関数とは、関数で対応させる元の数全てに同じ数字を対応させる関数です。
1なら1、2なら2という、ある定まった数字を、対応させる元の数全てに対応させるのです。
この関数をfとし、代数cを使って書くとf(x)=cということになります。
cは何か具体的な数です。
例えば3の時は、f(x)=3です。
これはxがどんな数の時も、この関数はその数を3に対応させるということです。
つまりf(0.2)=3だしf(-17)=3だしf(25)=3だしf(0)=3だしf(2/3)=3だということです。
ステップ関数でスイッチが入らなかった場合と同じです。
全ての数に同じ数を対応させるので、動的な変化は何もありません。
1次関数とは、関数で対応させる前の数に比例した数を対応させる関数です。
1には1が対応し、2には2が対応し、という風に、対応させる元の数が大きくなれば対応する先の数も大きくなります。
この関数をfで表し、代数bを使って書くとf(x)=bxとなります。
bは何か具体的な数で、比例係数になります。
この係数が大きければ対応させる元の数がちょっと大きくなっただけで、関数で対応する先の数はとても大きくなります。
例えばbが1の時は、1には1が対応し、2には2が対応しますが、bが500なら1に対応する数は500ですが、2に対応する数は1000になります。
つまり、bが1の時はf(1)=1×1=1だしf(2)=1×2=2だし、bが500の時はf(1)=500×1=500だしf(2)=500×2=1000だということです。
係数は別に負の数でも構いません。
その場合は関数で対応させる元の数が大きくなるほど、関数で対応する先の数は小さく、つまりどんどん負の方向に落ち込んでいきます。
この関数と定数関数の和もはやり1次関数と呼びます。
つまりf(x)=bx+cも1次関数です。
これはある数xにbを比例係数として掛けて定数であるcを足す関数です。
それは関数の主役はxで表されている、対応させる元の数であり、その数がどのように関数で計算されるかが重要なので、定数を足しても足さなくてもあまり気にならない所から来ます。
2次関数とは、1次関数の中に出てきた比例係数が、関数で対応させる元の数と一緒になって大きくなるような関数です。
つまりf(x)=x^2で表されます。
x^2はxの2乗の意味です。
累乗は本来はxの右上にちょこんと小さく書くべきなのですが、ネット上の文章として書くときはこの方が便利なのでこう書かせてください。
1次関数の比例係数であるbがもしxに比例して大きくなるなら、それはbではなくaxになります。
bxがaxxになるので、2回出てきたxxを累乗で1つにまとめてこのようになります。
これも具体的な例を考えると、aが2の時、f(1)=2×1^1=2だしf(2)=2×2^2=8だしf(3)=2×3^2=18となります。
1次関数よりも急な速さで関数で対応する先の数が大きくなっていきます。
比例係数まで関数で対応させる元の数に比例して大きくなっているので、当然です。
2次関数の時もやはり、1次関数や定数関数を足したf(x)=ax^2+bx+cも2次関数と呼ばれます。
xが最大何乗されているかで関数の名前が決まるのです。
xが3乗されている項があれば3次関数だし、4乗されていれば4次関数です。
これらの関数も、やはり単なる数と数の対応関係のことです。
さて、これらの関数が存在するということが分かったのですから、これらの関数の数学的な構造について調べていきます。
まずは逆写像に対応する逆関数の有無を調べてみます。
定数関数は対応させる元の数すべてがただ1つの定数であるcに対応しているので、写像を逆転させることはできません。
1次関数は基本的には対応させる元の数に比例係数bを掛けただけなので、bで割れば元に戻ります。
なので逆関数があります。
一般的な場合も、元の数にbを掛けた後にcを足すだけなので、まずcを引いてbで割ればやはり元に戻ります。
2次関数は2乗する計算が入っているので逆関数はありません。
なぜなら、2も-2も、2乗したら4になるからです。
対応させる元の中の2つの数が、対応する先で1つの数に対応するので、逆写像はありません。
次は合成写像に対応する合成関数について考えてみます。
ひとまず1次関数と別の1次関数を合成したら一体どんな関数になるか試してみます。
1つ目の関数をf(x)=bx+cとし、2つ目の関数をg(x)=b'x+c'とします。
b、c、b'、c'は何か定数です。
b'はbに'がくっついた定数で、bをちょっと変化させた、という雰囲気を出すためにわざわざdとかaとかを使わずに、'をつけて別の記号を作っているのです。
さて、1つ目の関数で対応させる元の数を対応させると、その数にbを掛けてcを足した数に対応します。
合成関数を考えているので、この1つ目の関数で対応させた後の数をそのまま2つ目の関数で対応させます。
そうすると1つ目の関数で対応させた後の数をf(x)で表すとf(x)=bx+cとなり、このf(x)を2つ目の関数で対応させるので最終的に得られる数はg(f(x))=b'f(x)+c'となります。
f(x)はbx+cのことだったので、これを代入するとg(f(x))=b'(bx+c)+c'=b'bx+b'c+c'となります。
これは1次関数です。
b'bをb"と書き、b'c+cをc"と書くとg(f(x))=b"x+c"となるので一目で1次関数であることが分かります。
1次関数は何個合成しても1次関数のままということです。
今度はf(x)=bx+cとg(x)=ax^2を合成してみます。
g(f(x))=a(bx+c)^2=a(bx)^2+2abcx+ac^2となります。
ab^2をa'、2abcをb'、ac^2をc'と書くと、g(f(x))=a'x^2+b'x+c'となります。
これは一般的な2次関数です。
つまり一般的な2次関数は2乗の項しかない2次関数と一般的な1次関数の合成関数ということです。
これは一般的な2次関数は1次関数の2乗として表せるという構造を持っているという意味になります。
このように合成関数を考える事によって関数が一体何からできているのか、その構造を解読できるのです。

最後に正弦関数と余弦関数について説明します。
正弦関数は別名サイン関数とかサインとか呼ばれます。
余弦関数は別名コサイン関数とかコサインとか呼ばれます。
サインは記号で書くときはsinと書き、コサインはcosと書きます。
今までの関数はfとかgとかの1文字で表してきましたが、アルファベット1文字では26種類の関数しか表せないので沢山の関数を表すためには2文字以上を使う必要が出てきます。
今回は3文字で表します。
この関数は少し特殊な関数です。
sinθ=y/(x^2+y^2)だしcosθ=x/(x^2+y^2)となります。
ただしxとyは半径1の円の中心に0を置いてxy座標を設定した時の、円の上の点で、θはx軸から測った角度です。
具体例は下のアプレットで見てください。

アプレット貼り付け予定地

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