第8章 数学4 回転の運動方程式

要約

運動には並進運動の他に回転運動がある。回転はベクトルである。回転にも運動方程式を導くことができる。

目次

8.1 回転運動

8.1.1 回転の性質

万物は回転する

第6章では物の運動を定量的に表し運動の3法則を導き、それを具体的な場合に適用して物の運動について深く理解した。 そこでは物の移動、つまりその物が置かれている場所が移動する運動を扱った。 そのような運動は並進運動と呼ばれる。 物の運動には並進運動の他にも回転という運動がある。 これから物の回転について詳しく調べていく。

例えばペンや鉛筆などの細長い物を用意して、その真ん中を指でつまみ、机や床などの平らな面に置いて軽くひねってやればその物はくるくると回り始める。 物に力をかけたのだから、動き出すのは当然である。 しかし、今の場合はその動き方が少し今までと比べて特殊で、その場でくるくると回転するだけである。 その物は平面上を動いていくことはなく、その場で回転し続けるだけなのである。 前後左右に動いていくことはない。

回転というのはくるくる回ることで、今まで扱ってきた並進運動とは性質が違う。 まず、回転運動は何かがくるくる回る運動のことで、その運動はどれだけの角度回転したか、という角度によって表すことができる。 例えばペンをひねって回転させる場合、横向きにペンを置いたら、それを少しずつひねっていったら横向きに置かれていたペンが縦向きに変わる。 さらにひねればまた横向きに戻ってくるが、先ほどとはペン先の向きが左右逆転した向きに変わる。 さらにひねればまた縦向きになり、さらにひねれば元の向きに戻ってくる。 回転とはこのように、物の向きが変わっていき、一回転するとまた元に戻る運動である。 これは並進運動とは違った性質を持った運動である。

このように回転とは物の向きが一連の変化をした後に一回転したら元に戻る運動である。 さらに回転はある点を中心にその周囲を回るという性質がある。 回転の中心になる点は動かずに、その周りの部分が動くのである。 例えばペンを回転させるとき、右端と左端を指でつまみ、右を奥向きに押し込み左を手前に引っ張って回転させたとする。 そのとき回転させる速さを右と左で同じになるように意識して回せば、ペンはペンの真ん中を中心にして運動する。 回転させる速さを右を速く、左を遅くなるように意識して回せば、回転の中心はペンの左側にずれる。 いずれにせよ一回転すれば回転する前の状態に戻る。

また回転には回転の速さというものがある。 例えばペンを回転させるなら、その一回転するのにかかるのに時間がどれくらいかかるかで回転の速度の速い遅いを考えることができる。 定性的には強い力をかけて回転させたら回転の速さも速くなり、少しの力しかかけないで回転させたら回転の速さは遅くなる。

また回転には回転の向きというものがある。 例えば机の上に置かれたペンを回転させるときは、右回転と左回転がある。 ペンの右端と左端を持って、右側を奥に押し込み左側を手前に引っ張ればペンは左回りに回転する。 つまり左回転する。 逆に右側を手前に引っ張り、左側を奥に押し込めばペンは右回りに回転する。 つまり右回転する。 右回転と左回転は回転の向きが違うので同じ速さで回っていても違う種類の回転である。

このように回転という運動の持つ性質は大まかに言ってこの様になる。 どこを中心にし、どの向きにどれくらいの速さで回転するのかが分かれば、それで回転運動の性質を言い表すことができる。 これらは並進運動とは違った運動である。

8.1.2 角速度

回転の速さ

このように物の運動には並進運動の他に回転運動という運動がある。 この運動を定量的に表すのに回転の速度を定量的に表す必要がある。

回転はある中心となる点の周りを回る運動である。 つまり、ある基準になる位置から何度回ったか、によって回転の運動を表現することができる。 その角度を回転角と呼ぶ。 例えばペンを横向きに置いておいて、それを回して縦向きに向きを回転させれば、回転角は90度になるし、それをさらに回転させてまた横向きにすれば180度になる。 このような回転角をθで表す。

回転には右回転と左回転がある。 ある基準になる向きを0として、そこから右向きに45度回転させた後に左向きに45度回転させれば元の向きに戻る。 一度回転させた後にもう一度回転させることを角度の足し算だと考えると、これは片方の回転が正の回転で別の回転が負の回転を表していることを意味している。 例えば、もし右回転を正の回転とするならば左回転は負の回転ということになる。 つまり、右向きに45度回転させた後に左向きに45度回転すると、

θ=45-45

=0

となるということである。 他にも右向きに90度回転するとθ=90となるし、左向きに60度回転するとθ=-60ということになる。 回転は一回転すると元に戻るのだから、360度回転すると元の向きに戻るのだが、始めからまったく動いていないのと一度回転して来て元の位置に戻るのとは違った現象であるのでその2つの角度は区別する。 つまり、θ=360とθ=0は違う角度である。

次に回転の速さを定義する。 回転の速度はこのような回転角の変化の速さのことなので、並進運動の速さと同じように回転の速度を定義することができる。 回転の速度とは1秒あたり何度の角度を回るかを表すのだから、角速度と呼ばれている。 速度のときと同じように平均の角速度を定義すると、時刻tの回転角をθ(t)、ある幅の時間をΔtで表すと、

ω=[θ(t+Δt)-θ(t)]/Δt

となる。 例えば1秒間に90度の角度を回転すれば平均の角速度は秒速90度になるし、10秒で一回転するなら一回転は360度だから平均の角速度は36度になる。 速度のときと同じように瞬間の角速度を定義すれば、、時刻tの回転角をθ(t)で表すと、

ω=lim [θ(t+dt)-θ(t)]/dt

となる。 limはdt→0の極限を表している。

角速度にも正の向きと負の向きがあり、もし回転角を右向きを正としているなら右向きに回転する角速度も正になり、左向きに回転する角速度は負になる。 例えば1秒の間に右向きに50度回転すれば平均の角速度は秒速50度だし、2秒の間に左向きに70度回転すれば平均の角速度は-35度になる。

8.1.3 回転はベクトルである

このように回転を角度、角速度によって定量的に表現することができる。 しかしこれだけでは不十分で、位置や速度のときと同じようにこれらをベクトルとして表す必要がある。

位置に前後左右上下という方向があったように回転にも方向がある。 例えばペンを机の上に置いてその上で回して回転させるのと、ペンを持ち上げて空中で縦に回して回転させるのとでは違った回転になる。 縦に回転させるのも、自分から見て円を描くように回転させるのと、自分から見て手前か奥に向かって回転させるのとではやはり違った回転になる。 これらの回転の他にも様々な斜めに向かった回転があるが、それらの回転はすべてこの3つの回転の一次結合によって表される。 つまりこれらの回転が回転運動の基底になる。

最も簡単な基底になるのは水平な平面の上を回転する回転と、それに垂直な方向に回転する2つの縦方向の回転である。 2つの縦方向の回転もお互いに垂直な平面の上を回転するのが最も単純になる。 これらの回転をする平面を位置ベクトルの表し方である(x,y,z)という書き方からxy平面とかyz平面とかxz平面とか呼ぶ。 (x,y,0)を(1,0,0)と(0,1,0)という基底で表される平面だと考えて、この平面をxy平面、同じように(0,y,z)をyz平面、(x,0,z)をxz平面と呼ぶ。 これらの平面の上での角速度をωxy、ωyz、ωxzと表すと、一般的な角速度は

ω=(ωxyyzxz)

となる。

8.2 回転の運動方程式

8.2.1 力のモーメント

ペンの回転を生み出す力と逆向きの力をかけたら回転が止まる。 これは正と負のベクトルに対応する。 右回転の物と左回転の物がぶつかったら止まるはず。 てこの原理について。

8.2.2 回転の運動方程式

8.2.3 回転運動の例

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